2024年5月31日金曜日

「台湾有事」の可能性は低いが、油断は禁物。

 そもそも「台湾有事」という表現が曖昧であり、具体的にどのような状態を指すのかは分からない。「何が起きるかわからない」という議論は、「何も起きない」と安全を保証できない状況だからこそ必要になる。とはいえ、「何が起きるのか」不明なままでは、対応策も考えられない。

 「台湾有事」を考えるには、過去および現在の中国やアメリカ、台湾が何を考えているのか正確に理解する必要がある。また、彼らが見聞きしていること、恐れていることを理解する必要がある。

 中国は「台湾独立は、死につながる一本道」と「台湾独立の動き」を牽制し、中国軍の弾道ミサイル発射や、上陸作戦の演習を台湾側に見せつけてきた。そのため「台湾有事」に相当する中国語は「台海戦争」(台湾海峡戦争)になる。今日、民進党政権下の台湾政府は、現在の台湾海峡つまり中台間の状況を「グレーゾーン」と呼んでいるが、日本の尖閣諸島沖での「グレーゾーン事態」とは全く同じではない。中国は尖閣諸島沖に「海警」(沿岸警備隊)の巡視船を送り込んでいるが、台湾には戦闘機を差し向けて威嚇している。こうした状況を見て、アメリカ、バイデン政権のロイド・オースティン国防長官は「台湾侵攻の予行演習をしているように見える」と表現した。

 また、アメリカ海軍の関係者も「数年内に中国が台湾に侵攻する準備をしている」と警鐘を鳴らしている。ハリー・ハリスJr.以降歴代のインド太平洋軍(旧太平洋軍)司令官(何れも海軍大将)が同様の発言をしている。その中で特に注目されたのが、フィリップ・デービッドソン司令官の議会証言における「中国は6年以内に台湾侵攻の準備を整える」という発言であった(2021年3月)。この発言の背景には、2026年までに中国海軍が西太平洋で海上優勢(いわゆる制海権、海軍力の「バランス」の問題)を握るという危機感がある

 こうしたアメリカ軍関係者の発言も、実際は中国軍による「台湾侵攻」が迫っている証拠とは言えない。中国軍が「台湾侵攻」作戦を決行する可能性は、非常に低い。なぜなら、上(着)陸作戦は、中国軍にとって極めて危険な上、必要な海兵隊・海軍陸戦隊や強襲揚陸艦などで構成される水陸両用戦力が整ってないからである。また、中国の陸軍がどれほど強大であっても、「台湾侵攻」作戦に参加するには、艦船や航空機で台湾海峡を渡る必要がある。しかし、こうした艦船や航空機は台湾の軍隊に迎撃されるため、無事、台湾に着上陸するのは極めて困難である。

 そもそも、近現代の大規模な上陸作戦は多くが失敗している。第二次大戦におけるノルマンディー上陸作戦や、朝鮮戦争における仁川上陸作戦などの成功例は、例外である上、何れもアメリカ軍によるものである。また、偵察衛星やレーダーなどの索敵技術が発達した今日では、事前に察知されずに上陸作戦を決行することは、ほぼ不可能である。中国軍の部隊が台湾側の海岸に取り憑いて橋頭堡(拠点)を築き、後続部隊を次々に上陸させる可能性も低い。

 ロシアによるウクライナ侵攻も、中国の台湾侵攻を促す要因になるとは限らない。繰り返しになるが、ロシア兵がウクライナに行くのとは違い、中国兵は台湾まで容易に辿り着けない。また、ウクライナで露見した旧ソ連・ロシアの誘導・防空兵器(ミサイルなど)の問題は、これらを導入してきた中国軍にとっても憂慮すべき問題である。例えば、中国は国産の防空システムHQ-9を他国に輸出する一方、ロシアのS-400を購入している。つまり、S-400はHQ-9より高性能だと考えられる。しかし、このS-400も西側諸国やウクライナ製ミサイルを迎撃できず、何度も撃破されている。

 台湾はウクライナよりも近代的な空軍や海軍を保有し、その防空システムはイスラエルに近い水準、密度であるほか、国産の巡航ミサイルも配備する。つまり、台湾が中国軍の攻撃に持ち堪える可能性がある上、中国側も台湾からの反撃を受けて、自国の軍隊や主要都市、重要インフラに対する被害を覚悟する必要がある

 実際に起こり得る、つまり(技術的優位性を欠いたまま)海軍力の量的優位のみで仕掛けることが可能な「台湾有事」は海上封鎖か、離島の奪取にとどまる。台湾は福建省にある金門島や媽祖諸島のほか、南シナ海上の太平島や東沙島などを実効支配する。もし、中国軍がこれらの離島を包囲し、補給を完全に遮断する「兵糧攻め」を仕掛ければ、台湾は離島や駐留する守備隊を守りきれない。とはいえ、台湾の守備隊が頑強に抵抗して死傷者を出せば、台湾の世論が激しく反発し、台湾国内の親中派は国内での政治的立場を失う。あるいは、中国国民党の内部で「本土派」と親中派の対立が激化し、同党が分裂するかもしれない。何れにせよ、中国と台湾による「平和統一」の望みは、完全に絶たれる恐れがある

 また、アメリカも台湾を自国陣営に留めるため、台湾に同情しつつ、中国に厳しい姿勢を示す必要に迫られる。つまり、中国の包囲網を解くため、軍事介入を躊躇するわけにいかなくなる。また、欧州諸国も巻き込んで、「米中貿易戦争」よりも厳しい、対中経済制裁を発動する可能性もある。

 さらに、アメリカ国内の親台派(対中強硬派)が米軍の台湾派遣だけでなく、「台湾独立」の「承認」や米台の外交関係の復活を求める可能性もある。こうした中国側にとってのデメリットやリスクを増やすことで、中国が海上封鎖や離島の包囲(兵糧攻め)を抑止できる可能性も高まる。つまり、中国を猛反発させる「挑発」(に見える行為)も、実際は中国側に自制を強いる牽制効果を発揮する可能性がある。現時点でも、「中国が台湾を攻撃した場合には、援軍を送るだけでなく、米台の外交関係も復活するべきだ」という声は、アメリカ国内で拡大している。バイデン大統領も「台湾のことを決めるのは、我々ではない。台湾は自分のことを自分で決める。」と発言している。

 中国の脅迫を無視して台湾を訪問したナンシー・ペロシ下院議長(当時)についても、バイデン大統領は「私には止められない」と述べた。確かに大統領には下院議長の行動を制約できないのは、当然のように思える。しかし、本当に軍や大統領が危険だと判断すれば、軍用機の使用を拒めるはずである。むしろ、バイデン大統領には、本気でペロシ議長を止める気などなかったのかもしれない。

 また、ペロシ下院議長を乗せた要人輸送機はマレーシアを離陸後、太平洋側に大きく迂回した。南シナ海上空を通るルートの倍近い時間をかけて、台湾まで飛行した。太平洋では空母や強襲揚陸艦(事実上の軽空母)や米軍機が展開して、護衛にあたった。つまり、バイデン政権やアメリカ軍は、中国軍がペロシ議長の搭乗機を追跡する可能性を認識しつつ、敢えて輸送任務を引き受け、アメリカ軍の実力を中国に見せつけたのである。

 バイデン大統領の発言やアメリカ側の「挑発」は、こうした軍事行動と合わせて、その意図や効果を考える必要がある。アメリカ軍が西太平洋での「戦力投射能力」つまり、自国本土から遠い場所で大規模な軍事行動を実行できることを見せることで、アメリカ側の中国に対する「挑発」は、むしろ中国側こそ「自制しなければ、不都合なことが起きる」という脅しになる。こうした脅しが「台湾有事」を抑止する(相手に圧力をかけて、その動きを止める)ことに繋がるのである。

 ただし、アメリカの要人輸送機が南シナ海を避けたことは事実である。南シナ海には中国の海南島からミサイル原潜が直接潜り込める深海がある。そのため、中国は、人工島と航空基地や軍港を作って、南シナ海の聖域化を図っている。台湾も南シナ海問題の当事国の1つであり、台湾問題と南シナ海問題も密接に関連している。

 また、現在のアメリカ海軍は台湾海峡にイージス艦(駆逐艦、巡洋艦)などを派遣しているが、空母は派遣しなくなった。何れも当然の措置だが、中国軍の強大化も事実であり、対するアメリカのインド太平洋軍、太平洋艦隊も戦力を増強する必要がある。

 2021年のデービッドソン司令官の議会証言は、海軍予算獲得の目的もあり、やや誇張気味に聞こえる。しかし、本当に「誇張」だとも言い切れない。米海軍の増強には、アメリカ国内の造船所不足という大きな課題がある。この問題が解決できず、軍艦不足が続くなら、航空戦力(戦闘機と空対艦ミサイル)や、地対艦ミサイルで補うしかない。

 つまり、「比較的穏便な方法」で中国を牽制するのは難しいより攻撃的な手段で中国を脅すしかない。なお、高速で空を飛ぶ戦闘機が水面を低速で航行する軍艦を牽制することは不可能でないにせよ、やはり「穏便な方法」はないだろう。そう考えると、米中の偶発的衝突を懸念する必要性は確実に高まっている。ただし、軍事衝突が台湾海峡で起きるとは限らない。本当に深刻なのは、南シナ海であろう。

2024年5月29日水曜日

台湾の政権交代と頼清徳新政権の課題(2024年4月)

台湾の政権交代と頼清徳新政権の課題」亜細亜大学ジア研究所『所報』194号に掲載。

柯文哲率いる台湾民衆党は、中国国民党、郭台銘の両方を天秤にかけつつ、総統選挙での勝利を模索したが、その結果、同党は帰って勢力拡大のチャンスを失った。本来なら、政権獲得より、国民党を潰すことに専念するべきだったかも。台湾では、過去の「小さくない」第3党でさえ、国政の舞台から消えた。勢力拡大に失敗した台湾民衆党の生存は、非常に厳しい。

頼清徳政権は発足後、立法院(国会)運営に苦労するが、長期的にはチャンスもある。頼清徳総統は追い込まれた場合、選挙キャンペーンなどのタイミングで、陳水扁のような「台湾独立」キャンペーンをやる可能性が大きい(むしろ、やるべき?)。アメリカが中国を封じ込めるには、台湾が親米政権でないと困る。だから、今のアメリカは「台湾独立」に強く反対できない。中国との緊張が高まれば、中国国民党が選挙で不利になる。中国も困る。そう考えると、今の民進党、頼清徳の立場は意外に強い。

 中国の切り札は、親中派の馬英九。総統選挙中も彼が暗躍。しかし、中国国民党の党勢拡大を図る朱立倫は党内親中派の牙城「黄復興党部」の改革を主張。一見「真っ当」に見える朱立倫の改革だが、本当に台湾・中国国民党から親中派が排除されれば、中国の「平和統一」は頓挫する。中国の軍事的暴発を避けるには、中国国民党が万年野党に甘んじてもらうべきかも。

頼清徳総統の就任演説と中国軍の演習:挑発したのは馬英九?(2024年5月)

  2024年5月24日に頼清徳総統が就任した。同日の就任演説は、あからさまに「台湾独立」を唱えず、平和と現状の維持を掲げつつ、台湾を威嚇する中国側に自制を求めるものであった。なお、就任演説は台湾の総統府に掲載されているほか、読売新聞が全文の日本語訳を掲載している。

 確かに過去の総統就任演説を比較すると、今回の就任演説は、中国側に全く媚を売らない毅然としたものであった。内容だけを見れば、陳水扁総統の「一辺一国」発言(2002年)に近いものだったとも言える。こうした強気の背景には就任演説でも言及されているように、中国の威嚇行為のエスカレートやロシアによるウクライナ侵攻によって、日米欧など西側諸国が台湾に対する支援を強めているという事情があった。

 とはいえ、一部の論評がいうように、中国は大規模な軍事演習をせずにいられないほど「激怒」した訳でない。中国が台湾に過度な反応を見せると、アメリカを刺激するリスクがある。アメリカが米ソ冷戦時代のような、対中「封じ込め」を撤回することはないだろう。それでも、中国は、これ以上アメリカとの緊張が高まる事態を避けつつ、なんとか台湾に馬英九政権のような親中派政権が復活することを願っていると考えられる。

 そのため、中国の対台湾事務を扱う国務院台湾事務弁公室は、20日中に頼清徳総統の演説に、控えめな批判を行うにとどまった。その中でも、頼清徳総統を「台湾独立派」とよび、中台対話の基本条件である「92年コンセンサス」を受け入れていないと批判したものの、頼清徳総統の演説を「両国論」と強く非難していない。むしろ、「平和統一」が台湾民意の主流であり、中国側の希望でもあることが強調された(「国务院台办发言人就台湾地区领导人“5·20”讲话表态」)。

 「両国論」(二国論)とは両岸関係の位置づけは国家と国家の関係、少なくとも特殊な国と国の関係にある」とした李登輝総統の発言(1999年)である。「両国論」の後、中国国民党と中国の対話は2005年まで、台湾と中国の窓口機関を通した事実上の公式対話は2008年まで凍結された。なお、中国国民党と中国は、2005年以前も水面下で接触していた。公式の立場の一貫性を重視する中国にとって、頼清徳総統の演説を「両国論」だと決めつけてしまうと、それなりに大きな反応を示す必要がある。だから、仮に思ったとしても、敢えて公に「両国論」と言わないのである。

 また、「互いに隷属しない」という表現は、2021年10月の国慶節で蔡英文前総統も用いていた。馬英九政権も、例外ではない。馬英九政権で対中政策を担った、賴幸媛大陸委員会主任委員が「中華民國是主權獨立的國家」(中華民国は主権独立国家である)「兩岸互不隸屬」(両岸は互いに隷属しない)という文言を用いていた(「陸委會主委賴幸媛接見薄瑞光,強調中華民國是主權獨立的國家」2009年11月23日)。批判した本人である馬英九も、2003年7月に同様の発言をしたとも言われる(「馬英九自打臉!批「兩岸互不隸屬」違憲 他和國民黨這些人其實都喊過」Newtalk、2022年11月8日)。このように、頼清徳総統が演説で用いた文言は陳腐化したもので、中国を強く刺激する要素だとは言えない。

 ところが、台湾の野党、中国国民党内の親中派は「頼清徳総統の演説には憲法上の問題がある」と批判し、これを「新両国論」と呼んだ。その代表例が馬英九基金会執行長つまり、馬英九元総統の側近である蕭旭岑が20日に行ったものである。彼は、下に引用した演説の赤字部分について批判した(「蕭旭岑:賴清德新兩國論 三大違憲」『聯合報』2024年5月21日)。

  • 無論是中華民國、中華民國臺灣,或是臺灣,皆是我們自己或國際友人稱呼我們國家的名稱,都一樣響亮。
    (中華民国、中華民国台湾、あるいは台湾のいずれであれ、皆、私達自身あるいは国際社会の友人が私達の国家の名称と呼ぶもので、いずれも同じように素晴らしい響きである。
    ⇒批判:台湾は国家の名称ではない。憲法改正なしに、国家の名称は変更できない
  • 「根據中華民國憲法,中華民國主權屬於國民全體;有中華民國國籍者,為中華民國國民;由此可見,中華民國與中華人民共和國互不隸屬。」
    (中華民国憲法によれば、中華民国の主権は国民全体に帰属するものである。中華民国の国籍を持つ者が中華民国国民である。そのことから、中華民国と中華人民共和国は、互いに隷属していないといえる。)
    ⇒批判(1):我が国(中華民国)は、中華人民共和国を承認しておらず、「大陸地区」と呼ぶべきである。
    ⇒批判(2)中華民国憲法では、「大陸地区」も中華民国の領土の範囲内だと規定している。

 そして、21日には、馬英九本人も同様の批判を行い、「頼清徳の『新両国論』は、すぐにでも両岸関係(中台関係のこと)を予測できないリスクやチャレンジに巻き込むだろう」と発言した(「賴清德「新兩國論」 馬英九:讓兩岸關係面臨不可預測的風險」『聯合報』2024年5月21日)。

 おそらく、中国側は、戸惑ったはずである。しかし、台湾の親中派を代表する、馬英九らに「反発するよう」を誘われれば、中国としては断れない。もし、この誘いを断れば、「弱腰」を見せたとアメリカや台湾の本土派(民進党などのこと)に思われるからである。

 そのため、中国側の対台湾事務を扱う国務院台湾事務弁公室は21日遅くになって、頼清徳総統の就任演説を「両国論」だと認め、非難した(「国台办:台湾地区领导人“5·20”讲话是彻头彻尾的“台独自白”」)。23日朝には、中国国防部も台湾周辺での軍事演習の実施(23~24日)を急遽発表した(「东部战区位台岛周边开展“联合利剑—2024A”演习」)。おそらくは、21日晩から22日(あるいは23日未明)の間にかけて、中国軍の将校らは限られた時間であっても、台湾側や周辺に展開するアメリカ軍を過度に刺激せずに済むよう悩みながら、演習の計画を練ったのではないか。

 この演習について特筆すべき点は、中国側が軍事演習を派手に喧伝しながら、実弾演習を見送ったことである。(中国側の)公式では、陸・海・空・ロケット軍と全ての軍種が動員されたことになっている。その演習の地理的な範囲も2022年にアメリカ議会下院のペロシ議会議長による台湾訪問時のように台湾を包囲する図が示された(「东部战区此次位台岛周边演习有何特点?专家深度解析」)。しかしながら、今回は弾道ミサイルも発射演習を実施していない。また、台湾海峡の中間線を演習範囲から外した。2022年時より台湾本島に近づいたようにも見えるが、実際にどの程度の演習が行われたのかは疑問がある。

 結局、台湾では、本土派つまり民進党よりのメディアや論客は、やはり今回の演習を単なる「威嚇」と見る傾向が強かった。最近は、本来保守派であるはずの外省籍の元軍人が、中国の威嚇に呼応する親中派を「漢奸」「台奸」(裏切り者)とよび、その言説を軍事面から反駁することも多くなった。

 それでも、親中派のメディアや論客は「頼清徳のような独立路線は、中国を刺激する。危険だ」と非難する形で、中国の軍事演習を政治利用した。それならば、やはり中国軍は、形式だけも「演習を実施した」意義を見いだせるだろう。実際の効果が薄くとも演習(威嚇)は「武力統一」に比べて、費用や損害の少ない「現実的」な統一工作だからである。

 ただし、今回の演習で実弾の使用が見送られたとはいえ、今後の展開については注意が必要だろう。というのは、中国が何れかの時点で、キューバ危機のような海上封鎖を台湾に仕掛ける可能性がある。その場合は偶発的な軍事衝突を避けるために、実弾演習を控えるべきだからである。

2012年9月3日月曜日

住民票における台湾の表記 その3 (暫定的まとめ)

住民票での台湾の表記について、7月中に千葉市役所、千葉県庁から返答をいただきました。東京都庁にも、事実確認のため東京都の扱いについて問い合わせしましたが、こちらも同様にいただきました。それから、さらに時間がたってしまいましたが、頂いた回答を受けて、暫定的なまとめをしたいと思います。


まず、東京都では2008年5月30日付けで区市町村に事務連絡を行い、その中で、
「海外へ転出した場合に、転出先の住所をどのように記載するかについて、国名でも地域名でもどちらでも差し支えない」、台湾については「「中国」と表記しても、「台湾」等と表記してもどちらでも差し支えないということを挙げ」たとのことでした。ただし、実際の取り扱いは、 区市町村の判断となっているそうです。

 その1その2を先にご覧頂いた方は驚かれると思いますが、千葉市役所はこの東京都の動きを見て、すでに届出人の記載に応じて「台湾」の記載を可とする方針を出していました。千葉市役所よりも千葉県庁から先に回答を頂いたですが、「転出先の具体的な記載方法については、住民基本台帳法、国が示した住民基本台帳事務処理要領にも明確な定めはなく、各市町村長の判断による。千葉市においては、転出先の国籍について「台湾」か「中国台湾」かを転出者の希望に応じて記載する取扱いにしている」とのことでした。本当かと思ったのですが、千葉市役所からの回答も、やはり「東京都の動きを報道で知り、平成20年(2008年)10月以降、届出人の記載に応じて、「台湾」単独での表記を可とした」ということでした。そして、問題の原因は「職員に十分周知されいなかった」ためであり、「再度周知徹底する」「深くお詫びします」というものでした。

結論ですが、区役所の担当者は、千葉市役所が届出より随分前に「台湾」表記を認めていることを隠し、これから対応すると述べていました。これは、嘘の重ね塗りです

なお、千葉市役所への私のと合わせ内容と回答が千葉市役所ウェブサイト9/4時点の掲載内容で公開されています。ただ、かなり要約されている他、私が再度問い合わせた内容とそれへの返答は、記載されていません。また、正直、読んでもよく理解できない点もあります。問題の箇所はこれです。

本市職員がご説明した「中国(台湾)」の表記ですが、平成23年7月1日から外国人登録法の国名表記として認められたものであります。
実は外国人登録の方法が変わり、新しい「住民カード」では「台湾」の表記が標準になります。でも、本人が希望すれば、「中国(台湾)」も可能になるということです。でも、住民票の話ではないので、この箇所は、ひとまず飛ばして読んだほうがいいです。そして、千葉市が掲載した回答では、「本市職員」がデタラメを述べていないように読めます。しかし、繰り返しになりますが、実際はそうではありません。この人は、住民票にも「中国(台湾)」「中国台湾」としか書けないと最後まで言い張ったんです。

少なくとも、私の問い合わせ内容については、絶対に修正が必要だと思い、その旨を千葉市役所も申し上げました。特に、転出届けの際の担当者の言動や、実際に届けで証明に「中国台湾」と記載して発行されたことが明記されてないのでは、問題隠しにも思えるからです。

追記
千葉「市長への手紙」を再度送りました。
これは、説明間違いといより、不正行為じゃないのかという疑念を明確に伝えるためです。

以下は、その本文転載です。
※訂正:発行された届出証明の記載は、「中国(台湾)」ではなく、「中国台湾」でした。
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こちらの件ですが、改めて市長の回答と掲載、および必要な措置をお願いすることにしました。
http://www.city.chiba.jp/shimin/shimin/kocho/shiminnokoe/h24/h24416.html

市から頂いた補足回答を見て、この問題は、単に誤った説明を受けただけではない事がわかりました。
本質は、花見川区役所市民課担当者(以下、担当者)が、本来できる手続きを不当に拒否したことにあります。

千葉市は2008年10月に住民票などに「台湾」と記載することを決めていたとの回答でした。
しかし、担当者は届けの当日、「台湾は中国の一部である」というのが国の方針であると間違った説明を行い、「台湾」の記載を拒否して、「中国(台湾)」の表記で発行しました。

その後、私が政府見解に関する説明がでたらめであると資料をメール送付したのち、この点については間違いを認めました。
しかし、担当者は千葉市としては台湾の表記について検討中であると回答しました。その際、担当者は関係各所にも確認した話した上で、実際は届けでに基づいて「台湾」の表記が可能であることを説明しなかったのです。これは極めて姑息な行為であると思われます。

この時点で、私が事実を知っていれば、当然、再発行を求めることが可能でした。しかし、事実を知らされたのは、この担当者ではなく、転出後に、市役所本部からの補足回答でした。

このように、本来可能である手続きを拒否し、また、市民が求めた事が可能であるにも関わらず、そのことを隠匿し続けようとしたことは、不正行為ではないでしょうか?

そうであるなら、単に市の方針の周知徹底やWebでの回答掲載だけで済む話ではないように思えます。花見川区役所市民課の課長や担当者らの処分と、書面での謝罪を行うべき事柄ではないでしょうか。

付け加えれば、電話にでた担当者は届けで当日の電話において「『台湾』とだけ記載すれば、それは問題である」と発言しています。ならば、虚偽説明を繰り返し、可能な記載を不当に拒否し続けたことも、当然問題であるはずです。そして、この担当者は自身の問題について、責任を負う覚悟があってしかるべきです。

また、この担当者は、私のように届出の際、台湾の記載を求められ、今回のように拒否したことはないといっていました。しかし、これも虚偽であると疑わざるを得ません。不正行為であるなら、過去の届出においても不正がないかチェックをお願いします。
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【転載終わり】

2012年7月26日木曜日

台湾で必要なものメモ

(電源プラグ)2ピン→3ピン変換アダプタ
Panasonic アースターミナル付変換アダプタ WH2881P  (こちらのほうが安い)
サンワサプライ  2P→3P変換アダプタ TAP-AD1RN (少し値段が高い)

台湾の電源プラグ・コンセントは日本と同じと言われます。 しかし、台湾ではアースも一体化した3ピンのプラグも使えるコンセントがあります。
その場合は、アースは3ピン目に差すことになります。つまり、日本でアース接続が必要な家電製品を用いる場合は、2ピンから3ピンに変換するプラグが必要になります。ところが、これが台湾では見つかりません。(3ピンの電源プラグを2ピンのコンセントに差すためのアダプタは、容易に入手可能です。)
アースのコードを直接、コンセントの3ピン目に突っ込みましたが、 出来れば、ちゃんとした変換アダプタがあったほうが良い気もします。

接触型スマートカードリーダー
台湾では、銀行のATMカード(キャッシュカード)はほとんどがICチップ内蔵です。これを読み込む接触型スマートカードリーダーがないと、ネット上での銀行取引ができません。
日本では「ネットバンキング」といえば、ひたすらパスワードなどを多用しています。しかし、正直こんなの覚えきれず、変なところにメモしたり、暗証番号カードなんて余計なものを渡されるハメになります。これはこれで、安全性を高めるためかもしれませんが、利便性を損ねている気もします。
台湾では日本以上に、ネットバンキングの安全性に神経をとがらせています。そのため、日本のようなネットバンキングでできるのは、残高照会と公共料金の支払、自分の持っている同一銀行の口座間(外貨預金口座など)の資金移動ぐらいです。そのかわり、「ネットバンキング」(網路銀行)とは別に、ATMカードを使った「ネットATM」(網路ATM)なるものが存在しています。この「ネットATM」のために、台湾にATMカードはICチップを内蔵しているのです。
接触型スマートカードリーダーなんて、高いんじゃないのかと思われがちですが、台湾では200元(600円弱)前後で入手できます。こちらでは「ATM晶片讀卡機」として、大型スーパーでも売られています。中には160元ぐらいの激安品もあります。逆に安全性を高めるため、暗証番号入力キーを備えたカードリーダーハッキング対策を施した「神盾」(イージス艦並の防御力?)カードリーダーもありますが、やはり売れ筋は200元前後のもののようです。
銀行ATM以外にも、政府が発行する「自然人憑證」やプリペイドカードの読み込みもできます。「自然人憑證」は日本の住基カードに近いものですが、ネット上から申請できる(受け取りは窓口)ことや、ネットからの納税にも用いられるなど住基カードとの違いもあるようです。台湾はすでに「國民身份證」があり、市民全員に識別番号があることも背景にあるのかもしれません。外国人の場合は、居留証で代用します。ちなみに、ネットバンキングでのログインにも、これらの身分証の番号が必要です。

2012年6月23日土曜日


住民票における台湾の表記 その2


昨日(2012年6月21日)、区役所担当課宛に私の反論をまとめたメールを送付しました。その上で、本日、区役所に再度電話しました。
以下は、その概要です。ただし、私の記憶によるものであるため、実際の会話を忠実に表現していません。あくまで、やりとりの要点をまとめたにすぎません。その点、ご注意ください。
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<<「台湾は中国の一部」発言は撤回も、住民票の表記は適切と主張>>


担当者:メールは拝見した。指摘を受け、こちらでも外務省サイトを確認した見た。台湾と日本は有効な関係にあることは理解している。個人的には台湾に良い感情を持っている。
しかし、外務省のサイトを見ても、台湾は国として認められてない。当方の対応は、外務省の見解から外れていない。

私:日本政府が、台湾が国として認めていない点はそのとおり。問題は、「中国台湾」という表記である。これでは、台湾が中国の一部であると認めることになる。また、昨日の説明でもそうだと発言された。これは、政府見解と全く違う。外務省のサイトには、そう書いてあったのか?

担当者:外務省サイトにあるPDFファイルの資料「最近の日台関係と台湾情勢」を見た。その4ページに、その旨の説明がある。

私:ここには、そんなこと一切書いてない。
ここに書いてあるのは、日中共同声明の内容説明だけ。「台湾が中国の一部」というのは、中国の主張である。日本はその主張を承認したなどと、書いてない。「理解し、尊重する」とは、中国が自分の主張を述べることに反対しないという程度。
しかし、日本政府は、中国以外、例えば2007年に国連事務総長が「台湾は中国の一部」と述べたときは、国連代表部を通じて抗議した。これが日本政府の方針である。

担当者:でも、台湾は国じゃないですよね。住民票には国を書かないといけない。だから、まず中国と書く必要がある。

私:国じゃなければ、台湾は何なのか?ちゃんと考えているのか?国じゃない、いわゆる地域は普通、宗主国などその地域の主権、つまり領有権を持つ国がある。香港やグアムはその事例だ。グアムはアメリカの主権下にある。軍隊も駐留している。
しかし、台湾は地域といっても、全く違う。台湾はどこの国にも所属していない。その点で、宙ぶらりんなのだ。それを、なぜ、中国に所属すると決め付けるのか?

担当者:国を書かないといけないんですよ。だから中国台湾としている。

私:それが政府見解と違うのだ。そもそも、台湾人の国籍が中国扱いなのは、過去の名残。つまり、日本が中華民国を承認していた時代の扱いである。
仮に今でも、日本が中華民国を承認しているなら、中華民国台湾地区といえるだろう。それを略して、中国台湾といえるかもしれない。
しかし、日本は中華民国を承認していないし、まして「台湾が中華人民共和国の一部だ」とも認めてない。
これで、どうやって、台湾が中国に帰属しているといえるのか?
台湾がどこの国に所属するのかは、宙ぶらりんのままなんだから、そのままで使えば良い。

<<住民票の表記と外国人登録は、やはり関係していたと認める>>

担当者:中国の一部でないことはわかった。でも、住民票は国名を書かないといけない。

私:国名に、台湾をカッコつきで書いている程度であったなら、あなたの説明で良いだろう。しかし、中国台湾と書く理由は、全く説明できていない。
国籍表記の問題は、役人のなかに自分の担当分野に国の外交の結果を反映せず、そのまま放置したことによることで、起きている問題の一つだ。
しかし、この点についても、国の方針は変わっているはずだ。すでに外国人登録では、パレスチナや台湾の表記が可能になった。国の見解があるから、中国台湾と書かなきゃいけないというのは、嘘じゃないか。
東京都は2008年にいち早く、住民票に「台湾」との表記できると、区市町村に通達した。その時に「千葉市も同時にやれ」といっても、できないかもしれない。でも、外国人登録に関する法改正は、2,3年前に出来た。その後なら、国の方針云々の話はなくなる。なのに、尻込みしているのは、千葉市の問題じゃないか?

担当者:それについては、今、総務省に問い合わせている。千葉市としては、国籍をどう書くべきか、総務省の回答を待ちながら、対応を考える。


私:総務省の回答待ちというのが、おかしい。東京都下の区市町村は、ばらつきがあるようだが、独自に判断し、「中国」抜き、「台湾」だけの表記に切り替えている。なぜ、総務省にばかり責任を押し付けて、自分で判断できないのか?

担当者:それについては、私にはなんとも言えない。ただ、あなたがおっしゃる問題は、千葉市としても検討するが、まだ結論が出ていないが現状だ。

私:検討や問い合わせは、いつしたのか。私に言われて、始めたのか?

担当者:外国人登録の方法が変わり、外国人の住民台帳に載せることになった。その法改正の直後から、市として検討を始めた。

私:昨日、あなたは昨日、私に「外国人登録の問題と住民票の問題は別だ」と言いましたよね。


担当者:今日のメールでの指摘を受け、各所に確認したら、今話したような状況だとわかった。
(注)

<<デタラメを市民に流布したあとの後始末も、今後の検討課題>>
私:間違いだとわかったのなら、今後、どう対応するのか?

担当者:まだ検討中で、時間がかかるとしか言えない。いずれ、対応はする。

私:表記の修正を事務的にやる以外にも、やるべきことがある。いままで、あなたは「『台湾が中国の一部』というのが国の見解だ」と、事実と異なる事を市民に説明してきたんですよね。

担当者:今まで、同様の指摘を受けてこなかった。だから、「台湾は中国の一部」だという話は、他の市民にしたことはない。むしろ、クレームがなかったから、今まで間違いに気付かなかった。

私:一般市民は、まさか公務員や役所が、法令や政府見解を破るとは思ってない。また、それらと違う説明を受けるとも思ってない。役所が住民票に台湾のことを「中国台湾」と書けば、それが正しいと思ってしまう人もいる。
それに、あなたは、正確な情報を持っていない人に、嘘の説明をした。昨日は、私にも「外国人登録と住民票は別問題だ」といったでしょう。公務員が嘘をついても、一般市民は、それを信じてしまう。私は怪しいと思ったが、改めて調べてみないと、反論材料を提示できなかった。多くの人は、役所の説明を反駁できるだけの材料を集められない。役所にあえて論戦を挑む勇気があるともかぎらない。だから、黙って、かえるだけじゃないのか?
で、今後どうするのか?私には間違いを認めておいて、他の人が台湾への転出入を届けて「表記がおかしい」と質問してきたら、また「台湾は中国の一部」なんて、言うのか?

担当者:そうではないと、わかった以上、今後は言わない。

私:いままで市民に誤解を与えてきたことについては、どうするのか?
ちゃんと訂正しないといけないでしょう。
千葉市として問題を総括して、市民向けの広報誌で説明するべきでしょう。
また、窓口でも、質問もせず、「台湾は中国の一部」と思って帰る人がいないように、ここで確認した事実をまとめたパンフを用意して渡すこと。そして、正直に、話して理解を得るべきでしょう。

担当者:それも今後の検討課題とさせて頂きます。

私:では、どうなったのかを、きちんと、私に知らせてほしい。
市のサイトで、市長あての投書もしたが、そちらからも、きちんと連絡してほしい。
再び、千葉市にどってきた時に、同じことが繰り返されていれば、また同じように抗議させてもらう。

担当者:わかりました。
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感想

根拠を示せば、一応、聞く耳は持ってもらえました。
しかし、昨日の「国の方針」一点張りの態度をみると、やはり知識がない人からの異論だったなら、あしらわれただろうという気がします。不特定多数の人を相手にする職業なので、変な人に当たることも多いのかもしれません。
(後日談:電話した直後は、そう思いました。しかし、後日、この電話でも担当者に騙されていることが分かりました!!下の(注)を御覧ください。)


しかし、さすがに台湾が中国だなんて、普通に考えれば、違和感を持ちます。市役所の担当者は、そういう違和感を感じないのか、感じても、仕事だから前にすすめるだけなのでしょうか?これは、恐ろしいことです。

問題の深刻さが違うかもしれませんが、戦時中は、勝手に天皇陛下の名前を語る人が増殖し、ニセの勅命が乱発されて、多くの人が死に追いやられました。「中国は台湾の一部」というのは、日本政府ではなく、中国政府の主張です。今回の問題は、それと共通する点がないでしょうか?

ニセものの「国の方針」を掲げる住民登録の担当者は、他の自治体でもいると聞きます。住民票の表記にとどまれば、人は死なないかもしれませんが、論理矛盾が放置される社会環境を正さないと、いずれ、大きな矛盾が生まれると思います。

いずれにせよ、千葉市では、とりあえず改善の方向に動くそうです。でも、本当なのか、今でも少し疑っています。もし、今後、千葉市の役所で台湾への転出、台湾からの転入、台湾籍の方による手続きをされた方で、担当者から「台湾は中国の一部」と言われることがあれば、私までお知らせください。改めて、私から強く抗議したいと思います。
申し訳ありませんが、他の自治体については、担当者に一から説明しないといけないので、私の手にはおえません。どなたか、自信のある方が率先して切り込んでいただくようおねがいいたします。

(注)実はこの下線部の説明も、全くのデタラメでした。千葉市役所は2008年10月に、住民票で「台湾」だけの表記を可とする方針を決めていたのです。各所に確認した後の説明ですから、再び勘違いで間違った説明をしたとは考えにくいです。詳細はその3を御覧ください。

2012年6月21日木曜日

住民票における台湾の表記 その1

行政の現場では未だに台湾が「中国の一部」として扱われていると、聞き及んでいましたが、私もこの問題に直面してしまいました。
海外赴任のため、千葉市で転出の届出をしたところ、台湾は中国だと言われ、届けの証明にもそう記載されたのです。「中国に行くんじゃない。」といったのですが、担当者は口頭で説明しても、「国の政策として、台湾は中国の一部となってる。それ以外の書き方をすれば、そのほうが問題だ。」といって、「台湾」との表記を拒否されました。
色んな手続きに必要なので、問題が解決しないまま、証明書を受け取ってしまいましたが、市役所に改めて質問をしました。
以下は、個人情報を除いた上で、再掲載するものです。

メール送付後の経過については、その2を御覧ください。
暫定的なまとめをその3として掲載しました。


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お電話では、「中国(台湾)」(注)での表記が法令上正しく、「台湾」だけの表記は法令上問題となるとの電話でご回答頂きましたが、
自身の勉強も兼ねて再度調べてみました所、不正確と思われる点がありましたので、お知らせしておきます。


第1点は、台湾が中国の一部だと、我が国政府が認めているという回答ですが、これは明らかに間違いです。

まず、政府見解は平成17年(2005年)の国会答弁にあります。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b163066.htm
この意味は、中国が「台湾は自国の一部」と言っているのに対して、日本政府は「理解し、尊重する」ものの、「承認はしない」ということです。

我が国政府はこの考えにもとづき、「台湾が中国の一部」としたパン国連事務総長の見解に反論したこともあります。
2007年に台湾が総統の名で国連に加盟申請書を送付したところ、国連事務局がこれの受け取りを拒否した時です。

この点は、政府の委託を得て台湾との関係を扱っている交流協会の池田台北事務所長(当時)が、上記の事実を公表し、
また、政府見解に関する解説も、交流協会機関誌の中で行っています。(以下、URLの4ページ)
http://www.koryu.or.jp/taipei/ez3_contents.nsf/21/25B06476300916224925740800353FE4/%24FILE/2008_01_31.pdf

この記事そのものは個人的な意見との断りがありますが、政府見解と異なる場合は、外務省が「政府見解と異なる」旨を表明します。
実際、池田氏の次に台北事務所長となった齋藤正樹氏が、政府見解に含まれない個人的意見を述べた際は、外務省がその旨を表明しました。
しかし、池田所長による解説については、外務省も訂正をしていませんので、間違っていないことが確認できます。
(もし、池田所長の解説が、政府の公式見解と違うなら、その根拠を教えて下さい。)


第2点は、外国人登録では国籍に変えて台湾の表記が出来るが、これは住民票と別の問題だとする回答です。
こちらは私の専門外なので詳細は分かりませんが、やはり正確であるとは言いきれないように思われます。

以下URLでは、総務省が外国人登録での記載と住民票の表記を一致させる必要があると答えています。
http://melma.com/backnumber_100557_5567340/
外国人登録に関する法改正は最近であるため、台湾人の登録内容が個人によって異なるとはいえ、住民票にも影響する問題のようです。

また、2008年には東京都が住民票において、台湾だけの表記が可能であるとの通知を都下の市町村に出していま
したがって、これは国で定められた法令上の問題ではなく、千葉市あるいは区役所としての独自判断ではないのでしょうか?
また、転出先表記についても、本当に法令上問題になるのかは、疑問に思われます。

そもそも、国の見解云々を言う場合、異なる制度、政策で対応が違うなら、どれが正しいのか確認する必要があるはずです。
我が国においては、国際関係を扱うのは外務省であり、同省の方針は総理大臣の判断に従っているはずです。
上記の「理解し、尊重する」云々の文言も、初出は日中国交回復に関する共同声明にあり、これは当時の田中角栄総理大臣および大平正芳外務大臣の判断によるものです。
現在の政府、総理大臣も、同様の立場を取っている以上、各省庁や自治体が異なる「政府見解」を作り出す事はできないはずです。
もし、従来の事務慣習から、台湾に関する政府見解を想像されていたのでしたら、外務省にも確認した上で、住民票の問題を管轄する総務省に対してにも齟齬の理由について確認するべきではないのでしょうか?
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(注)実際の住民票の転出先記載を見たら、「中国(台湾)」ではなく、「中国台湾」でした。届出をしたのは家族で、その電話で受けて、区役所担当者とも電話で一度話した際、「中国(台湾)」になると言われました。メールを書いたのは、そのすぐ後なので、住民票の現物は確認していませんでした。


続編があります

このメールの後、区役所に電話しましたが、定時を過ぎていたためか、つながりませんでした。そのため、翌日、改めて電話をかけました。その概要は、こちらです。