2012年6月21日木曜日

住民票における台湾の表記 その1

行政の現場では未だに台湾が「中国の一部」として扱われていると、聞き及んでいましたが、私もこの問題に直面してしまいました。
海外赴任のため、千葉市で転出の届出をしたところ、台湾は中国だと言われ、届けの証明にもそう記載されたのです。「中国に行くんじゃない。」といったのですが、担当者は口頭で説明しても、「国の政策として、台湾は中国の一部となってる。それ以外の書き方をすれば、そのほうが問題だ。」といって、「台湾」との表記を拒否されました。
色んな手続きに必要なので、問題が解決しないまま、証明書を受け取ってしまいましたが、市役所に改めて質問をしました。
以下は、個人情報を除いた上で、再掲載するものです。

メール送付後の経過については、その2を御覧ください。
暫定的なまとめをその3として掲載しました。


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お電話では、「中国(台湾)」(注)での表記が法令上正しく、「台湾」だけの表記は法令上問題となるとの電話でご回答頂きましたが、
自身の勉強も兼ねて再度調べてみました所、不正確と思われる点がありましたので、お知らせしておきます。


第1点は、台湾が中国の一部だと、我が国政府が認めているという回答ですが、これは明らかに間違いです。

まず、政府見解は平成17年(2005年)の国会答弁にあります。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b163066.htm
この意味は、中国が「台湾は自国の一部」と言っているのに対して、日本政府は「理解し、尊重する」ものの、「承認はしない」ということです。

我が国政府はこの考えにもとづき、「台湾が中国の一部」としたパン国連事務総長の見解に反論したこともあります。
2007年に台湾が総統の名で国連に加盟申請書を送付したところ、国連事務局がこれの受け取りを拒否した時です。

この点は、政府の委託を得て台湾との関係を扱っている交流協会の池田台北事務所長(当時)が、上記の事実を公表し、
また、政府見解に関する解説も、交流協会機関誌の中で行っています。(以下、URLの4ページ)
http://www.koryu.or.jp/taipei/ez3_contents.nsf/21/25B06476300916224925740800353FE4/%24FILE/2008_01_31.pdf

この記事そのものは個人的な意見との断りがありますが、政府見解と異なる場合は、外務省が「政府見解と異なる」旨を表明します。
実際、池田氏の次に台北事務所長となった齋藤正樹氏が、政府見解に含まれない個人的意見を述べた際は、外務省がその旨を表明しました。
しかし、池田所長による解説については、外務省も訂正をしていませんので、間違っていないことが確認できます。
(もし、池田所長の解説が、政府の公式見解と違うなら、その根拠を教えて下さい。)


第2点は、外国人登録では国籍に変えて台湾の表記が出来るが、これは住民票と別の問題だとする回答です。
こちらは私の専門外なので詳細は分かりませんが、やはり正確であるとは言いきれないように思われます。

以下URLでは、総務省が外国人登録での記載と住民票の表記を一致させる必要があると答えています。
http://melma.com/backnumber_100557_5567340/
外国人登録に関する法改正は最近であるため、台湾人の登録内容が個人によって異なるとはいえ、住民票にも影響する問題のようです。

また、2008年には東京都が住民票において、台湾だけの表記が可能であるとの通知を都下の市町村に出していま
したがって、これは国で定められた法令上の問題ではなく、千葉市あるいは区役所としての独自判断ではないのでしょうか?
また、転出先表記についても、本当に法令上問題になるのかは、疑問に思われます。

そもそも、国の見解云々を言う場合、異なる制度、政策で対応が違うなら、どれが正しいのか確認する必要があるはずです。
我が国においては、国際関係を扱うのは外務省であり、同省の方針は総理大臣の判断に従っているはずです。
上記の「理解し、尊重する」云々の文言も、初出は日中国交回復に関する共同声明にあり、これは当時の田中角栄総理大臣および大平正芳外務大臣の判断によるものです。
現在の政府、総理大臣も、同様の立場を取っている以上、各省庁や自治体が異なる「政府見解」を作り出す事はできないはずです。
もし、従来の事務慣習から、台湾に関する政府見解を想像されていたのでしたら、外務省にも確認した上で、住民票の問題を管轄する総務省に対してにも齟齬の理由について確認するべきではないのでしょうか?
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(注)実際の住民票の転出先記載を見たら、「中国(台湾)」ではなく、「中国台湾」でした。届出をしたのは家族で、その電話で受けて、区役所担当者とも電話で一度話した際、「中国(台湾)」になると言われました。メールを書いたのは、そのすぐ後なので、住民票の現物は確認していませんでした。


続編があります

このメールの後、区役所に電話しましたが、定時を過ぎていたためか、つながりませんでした。そのため、翌日、改めて電話をかけました。その概要は、こちらです。