2024年5月29日水曜日

台湾の政権交代と頼清徳新政権の課題(2024年4月)

台湾の政権交代と頼清徳新政権の課題」亜細亜大学ジア研究所『所報』194号に掲載。

柯文哲率いる台湾民衆党は、中国国民党、郭台銘の両方を天秤にかけつつ、総統選挙での勝利を模索したが、その結果、同党は帰って勢力拡大のチャンスを失った。本来なら、政権獲得より、国民党を潰すことに専念するべきだったかも。台湾では、過去の「小さくない」第3党でさえ、国政の舞台から消えた。勢力拡大に失敗した台湾民衆党の生存は、非常に厳しい。

頼清徳政権は発足後、立法院(国会)運営に苦労するが、長期的にはチャンスもある。頼清徳総統は追い込まれた場合、選挙キャンペーンなどのタイミングで、陳水扁のような「台湾独立」キャンペーンをやる可能性が大きい(むしろ、やるべき?)。アメリカが中国を封じ込めるには、台湾が親米政権でないと困る。だから、今のアメリカは「台湾独立」に強く反対できない。中国との緊張が高まれば、中国国民党が選挙で不利になる。中国も困る。そう考えると、今の民進党、頼清徳の立場は意外に強い。

 中国の切り札は、親中派の馬英九。総統選挙中も彼が暗躍。しかし、中国国民党の党勢拡大を図る朱立倫は党内親中派の牙城「黄復興党部」の改革を主張。一見「真っ当」に見える朱立倫の改革だが、本当に台湾・中国国民党から親中派が排除されれば、中国の「平和統一」は頓挫する。中国の軍事的暴発を避けるには、中国国民党が万年野党に甘んじてもらうべきかも。