2011年9月26日月曜日

アメリカ、台湾のF-16A/Bアップグレードを決定も、F-16C/D を供与せず

2011年9月21日、アメリカ政府は台湾へ総額58.52億ドルの兵器供与を決定した。これで馬英九政権が1期のうちにアメリカから供与を受けた総額は183億ドルとなり、3期12年間続いた李登輝政権時代の162億ドルをも上回ることとなった。

そのうち、53億ドルはF-16A/B戦闘機のアップグレードおよび、同機用のミサイル、爆弾で占められる。他は、F-16戦闘機パイロットの訓練(約5億ドル)や、F-5E、経国号戦闘機やC-130輸送機の部品(5200万ドル)などである。

F-16A/B戦闘機のアップグレードの内容は、AESAレーダー(おそらくAPG-80)、ALQ-ALQ-213電子戦管理システム、ALQ-184電子妨害ポッド(82セット)、モジュール化されたコンピュータ、液晶画面で構成されたコックピット、F100-PW-229エンジンなどである。これらは、アメリカ空軍向けのF-16のアップグレードとほぼ同じ構成である。台湾のF-16A/Bはもともと、F-16C/Dに匹敵する装備を持っていたが、以上のアップグレードにより、アラブ首長国連邦のF-16E/Fという4+世代戦闘機に匹敵する性能を持つことになる。
さらに、短距離空対空ミサイル「サイドワンダー」の最新型AIM-9Xが140発および、その訓練用が56発、CBU-105クラスター爆弾クラスター爆弾64発、レーザー誘導も可能なJDAM128セットも、F-16用に売却が決まった。これで台湾は近代化著しい中国空軍に今しばらくのの間、対抗しうる手段を得たことになる。

ただし、台湾が求めていたF-16C/D戦闘機66機の供与は見送られた。このため、台湾は老朽化が進むF-5E戦闘機を更新することが出来ないことになる。F-5Eはしばしば墜落事故を起こし、パイロットだけでなく、地上の兵士まで巻き込む死亡事故も発生している。台湾がF-16戦闘機の追加供与を求めたのは、単に新しい機種を導入して戦力の近代化を図るだけでなく、安全上の理由もあった。
アメリカ政府高官が今後の戦闘機供与を否定しないと示唆しているとの報道もある。しかし、F-16は既にアメリカ空軍での調達が既に終了しており、海外向けの生産もまもなく終了する。今後は第5世代戦闘機であるF-35の生産に移るが、台湾にこのF-35が供与される可能性があるのかどうかは不明である。