日本では未だ福島第一原発事故の後始末のめどがたっていない。この事故で世界各国では、原発の是非についての議論が活発化している。日本の原発に立地につ いて海外と比較して、地震頻発地帯にあるとか、首都圏のような大都市圏から近すぎる、1個所にいくつもの原子炉が密集しているなどの批判もあるようだ。し かし、こうした事情は台湾も同じである。いや、もっと酷いかも知れない。
台湾は日本の九州ほどの国土で、原発は3個所ある。そして、現在 4番目の原発(第4原発)が完成に近いとことまでこぎ着けている。この第4原発の是非を巡っては、2000年に民進党の陳水扁政権が誕生したときに、工事 を続行するかどうかで、当時の野党国民党ともめたことを記憶している人もいるだろう。民進党は議会である立法院の多数を占めておらず、結局、陳水扁政権が 折れて、工事は続行された。
肝心の台湾の原発立地だが、工事中の第4原発を含め、3つが新北市(旧台北県)にある。そう、事実上の首都である台北の隣なのだ。特に第1と第2は、台北市と目と鼻の先にある。万が一事故が起これば、首都圏は大混乱するだろう。これはかなり危ないと言わざるを得ない。
ちなみに、残りの1つ(第3原発)は、屏東県という南端の所にある。この隣は台湾第2の都市圏、高雄市だ。ただ、第3原発から高雄市の中心部(旧高雄市)までは、少しだけ距離はあるが。。。
維基百科 臺灣發電廠列表
台灣電力 電力系統圖
当 然、台湾では福島の事故の後、原発を巡る議論に火が付いている。今の馬英九政権は基本的に原発推進派であった。一番古い第一原発についても、古い原子炉の 延長使用を考慮していたが、今回の事故を受け、これを撤回した。近いうちに、第2原発の原子炉にも耐用年数を迎えるものが出てくるが、これについても延長 使用はできないだろう。そして、完成間近の第4原発については、今後商用稼働させるかどうか、議論になっている。
馬英九政権はひとまず、 「安全性を徹底的に確認できるまでは第4原発を商用稼働させない。」と言っている。ただし、逆に考えると、安全なら稼働させたいということだろうか。いず れにせよ、来年1月には総統選挙と立法院選挙がある。もし、民進党政権が誕生すれば、再び第4原発計画の中止が俎上にのぼるのだろうか。立法院が国民党多 数なら、陳水扁政権時代の繰り返しというシナリオになる可能性が高い。民進党が立法院の多数議席を握れば、今度こそ本当に中止されるかもしれない。
た だ、既存の原発で寿命を迎える原子炉が出てくる以上、どちらが政権についても台湾の原発の発電力は低下を免れない。それは、台湾全体の発電力が減ることを 意味する。その時、完成している新型原子炉を動かさないで済むのだろうか。台湾の電力需給がどうなってるのか分らないので、何とも言えないが。。。